どうしよう、どうしたものだろう。逆に聞きたい。どうしたらいいと思う?
目の前には好きな女の子。オプション。俺の部屋。プラス、りせは寝てる。
なんで寝たんだ。飲み物取りに行っただけなのに。まあ、菜々子と少し話してたけど。少し、というか、まあ、結構長かった気もする。暇だったのか。それにしても寝付くの早すぎるだろ。
ソファーに腰掛けて、背もたれにもたれ掛かって寝ている彼女。付き合って二週間。手を繋いだのがその日。キスはまだ。キス、と思わずりせの顔をまじまじと見てしまう。長いまつげ。閉じられたまぶたには軽くメイクが施されている。が、俺はすっぴんも可愛いことを知っている。綺麗な肌。薄く開いた唇。グロスを塗っているらしくて、なまめかしく濡れていた。
ごくり、と唾を飲み込む。誘われているようにしか見えない。添え膳食わぬはなんとやらだ。ここでいかなかったら男としてどうなんだ。どうなんだ夏目和己。

「……」

乗り出していた身体をがっくりとソファーに預けて、俺は大きなため息をつく。無理に決まってる。寝ている隙になんて、フェアじゃない。
だいたい、俺を信用しきったこの寝顔を見てどうこうできるわけがない。
りせの頭が少しずれて、俺の肩に落ちてくる。その頭をひと撫でして顔にかかった前髪をはらってやると、ん、と身じろいだ。俺は息をつく。仕方ないな。

「おやすみ、お姫様」

いくじなし、とりせの口が動いた気がした。


乙女てぃっく、
(怖いくらい、べた惚れ)


りせは寝たふりです
(101024)