薄い雲が張る空は寒々しくて、昭栄は思わずはあ、と息を吐いた。
白い吐息が余計に寒く感じてしまう。バスの待ち時間というのは退屈だ。なにより寒い。マフラーに顔を埋めるとぱちぱちとまばたきをした。

昭栄の乗るバスは、功刀の最寄りのバス停を経由する。
そのため昭栄が乗る頃には必ず功刀は乗車していて、二人掛けの席の窓際に腰掛けているのだ。
その隣は、昭栄の指定席。と、自分では勝手に思っている。でも、きっと思い上がりではないはずだ。

遠くに見慣れた乗り物を見つけベンチから立ち上がる。
ああ、バスが来た。



「おはようございます!」
「…うるさか」

挨拶をすれば気だるそうな表情で一蹴された。功刀は朝に弱い。いつも眠そうな顔をしているが、今日はなんだかいつもよりもまぶたが閉じている。

「夜更かしばしたとですか?」
「言っとっけど、きさんと違ってゲームじゃなかぞ」
「えっ!じゃあなんで夜更かしするとですか?」
「勉強じゃあほ!」

ゲームしか夜更かしする原因が思いつかないという顔で首を傾げる昭栄に強烈なハタキを食らわすと、その動作もだるかったようで、くあ、とあくびをした。

「テスト前じゃなかとに勉強するとですか…カズさんえらかー」
「きさんはテスト前でも勉強せんけんな」
「はい!」

いばるとこじゃなか、と呟いて目を擦ると、もう限界だと呟く。

「寝る」
「え、」

こてん、と昭栄の肩に頭を乗せると目を伏せてしまった。
昭栄はというと、ドギマギとして思わず功刀の顔を覗き込む。

「か、カズさん?」
「肩、貸せ」

先輩命令たいと言われればなにも言えないわけで。
あたふたとひとり慌てふためく昭栄は、功刀の頬がほんのり色づいていることに気付かなかったのだった。


登校バス
(甘え下手なのだから、黙って甘やかせよ)


title→joy
(101220)