冷たさで目が覚めた。
ひんやりとした感覚に思わず目を開くと隣で眠っていた三上の手だった。随分と冷えている。布団から飛び出しているせいだ。自分の毛布を掛けるとその上からぽんぽんと数回叩いた。冷たさは凶器だ。身体にも悪い。
あまり冷やすなよ、としっかり三上に布団を着せて思わず笑ってしまった。自分は三上の母かなにかか、と自分でつっこむ。そうではないが、彼が心配で、愛しくてたまらないのは母となんら変わりはないと思う。
その愛しさはライクではなくてラブなのだけれど。

布団から這い出ると椅子にかけてあった上着を自分もしっかりと着込む。同じベッドで寝たのは久しぶりだった。というのも、昨日事に及んだせいである。
寒がりな彼は文句を言ったが、最終的には身体は火照り熱くなったからよしとしよう。なんて、少し変態のようだなと我ながら思った。

朝は一杯の緑茶を飲むと決めている。
コーヒーも紅茶も好きだが、朝はこれじゃないとしっくり来なかった。
三上はコーヒーの方が好きらしい。本人いわく、朝からブラックは目が覚めていいのだと。
和よりも洋が似合う彼にはコーヒーのほうが「らしさ」を感じる。

昨日無理をさせたから、朝の一杯くらい飛び切りおいしいのを淹れてやろう。本当はのどにいい蜂蜜レモンなんかを飲ませてやりたいが、甘いものを極端に嫌う彼はきっと顔をしかめるだろう。けれども痛めたのどにコーヒーというのもなんだか悪い気がするので、今日は緑茶で。
ぶつぶつ文句を言いながらも、きっと彼は飲み干してくれる。それは、予想というより確信。

朝に弱い三上は、自力じゃ起きないだろう。
起こせば、不機嫌になるだろうけど、今はなんだか声が聞きたいから。

「…おい三上。朝だ」
「う、ん…」

かすれた声に微笑んでひとこと。


おはよう。


title→joy
(101219)