どうしてリーフさんは触れてくれないんだろう。
ソファに座って手持ちのポケモンの毛づくろいをするリーフさんをこっそり覗き見しながらそんなことを考えた。
リーフさんに好きと伝えて、好きと言われて幾日か。相変わらずリーフさんは優しいし、いつも私のことを気にかけてくれるし、今だって、会いに来てもいいですかと突然連絡した私を嫌な顔ひとつせずにおうちに入れてくれた。
だけど、リーフさんの手は私に触れない。
ブラシでイーブイの首元の手を梳いているリーフさんは、この子、まだ小さいでしょうとイーブイから目を離さずに言った。

「うちの子がね、この前タマゴを生んだの。最近孵ったのよ」

まだまだ赤ちゃん、と笑ったリーフさんがイーブイの頭を撫でる。気持ちよさそうに鳴くイーブイに、思わず「いいなあ」と思ってしまい赤面した。なんだか私、欲求不満みたいだ。

リーフさんは、私に触りたいって思ってくれないんだろうか。
私は、リーフさんに触りたい。そうして触ってほしいって思うのに。



はいおしまい、とリーフさんがイーブイの毛づくろいを終えそのお尻をポンと叩いた。ぴょんと膝からジャンプしたイーブイは私の元へと駆けてくる。
しっぽをフリフリして抱っこを待つイーブイが目まいがするほど可愛かったので、座り込んで促されるまま抱き上げた。

「わあー可愛い!小さい!フワフワ!」

さすがリーフさんのおうちの子、さすがリーフさんのお手入れ!
いろいろ混じって「さすがリーフさん!」と満面の笑みで見上げたら、リーフさんが固まった。

「ハート」

呼ばれて、返事をする前にリーフさんは私の頭を引き寄せる。
そうしてキスをして。
今度は私が固まってしまって、弱ったようにリーフさんが笑った。

「ごめんね、待ってようと思ったのに」

抑えの利かない駄目な先輩ね、とリーフさんが自嘲したのでハッとして首を振った。
じわじわとようやくリーフさんを感じて熱を持つ頬。
どうしていいかわからなくて、でも、リーフさんの言葉に触れたかったのは私だけじゃなかったのだと思うと胸を渦巻いていた不安が溶けていく。

「……ました」
「え?」

「ずっと、待ってました」

赤らんだ顔のままじっと見つめれば、乞われるがままにリーフさんはもう一度私の唇に触れた。


which is which
(どちらも待ってたつもりなの)


診断メーカーにて『リーフがハートの頭を掻き抱くように引き寄せて唇を奪うと「ずっと待ってた…」と頬を染めた顔で微笑まれました。』より
(120127)