嫌いだ、と震えた声で君が言うものだから、僕はどうしたらいいのかわからなくてただそこに突っ立っていた。
君の肩を抱けばいいのか、それとも、僕も嫌いだと君を拒絶した方がいいのか、それが僕にはわからない。
君は僕の初めての人間のトモダチで、できれば嫌われたくないなあと漠然と思った。そうして、君を嫌いだと拒絶することは僕にはどうにもできそうにないので、僕が君にしてあげたいと思った方をすることにした。
そっと肩に触れ引き寄せると、驚くほど素直に僕に身体を預けた。

「…嫌いだ」

お前なんか、と続く言葉に、トウヤの奥にいたダイケンキが不安そうに揺らめいた。大丈夫だよ、と僕は目配せをして安心させると、トウヤの頭をそっと撫でた。
久しぶりのトウヤ。ずっと会いたかった。だけど、その勇気はなかった。堂々巡りをしていた僕を、トウヤはほんの二年で見つけてしまった。ほんの、と表現したらトウヤの眉が上がって、二年もの間違いだろ、と怒られた。
だけど、僕は君の前に二度と現れないつもりだったんだ。そう言ったら君は怒るかな。怒ってくれるのなら、少し嬉しい。

「…ずっと、どこにいたんだよ」
「いろんなところ」
「ずっと、探してたのに」
「ごめんね」

嫌いだ、とトウヤがもう一度言ってほろりと一粒頬に星を零した。すくってあげたらよかったんだろうけど、それがあまりにも綺麗だったから、僕はただじっと息を飲んで見ることしかできなかった。

「嫌いだ」
「ごめんね」
「…いなくなってしまうお前なんて、大嫌いだ」

君に嫌われたくはないなあ、と僕が言うと、トウヤは僕から身体を離してじっと僕を見つめた。なんとなくその瞳に誘われて、僕はそっと口付ける。トウヤが背伸びをして僕の首に腕を回した。少し背が伸びた気がするけど、僕も伸びたからあんまり変わらない。むしろ差は開いた気がする。唇が離れても僕たちの距離は近いままで、僕の方がくらくらしてしまう。

「…もっと」

離れてた分だけしてくれないと、許さない。
そんな可愛いことを言う口はこの口かい、と微笑んでキスをした。


大嫌いって言ったら、嫌いになれると思ってた
(何度言おうと、胸は傷ついていく)


title→デコヤ
(101013)