「春馬とアイスどっちが好きだ?」

ぱちくりと瞬きをしたカイトに焦れたようにアカイトがもう一度問うた。
あいつのドラマでやってたんだよ、と付け加えるとようやく納得した顔になる。

「きゅ、究極の選択…」

その顔も束の間、今度はうんうんと頭を抱え込み始めた。

「どっちかしかだめ?」
「だめ」
「うう…いじわる…」

カイトがぐるぐると目を回しながら考えていると、玄関の開錠音が聞こえてきた。
ただいまー、と間延びした声にカイトがパッと顔を上げたが、そのまま強張らせる。

「カイトー、アイス買ってきたぞ」
「お邪魔しまーす。カイトくん、アカイトはいい子にしてた?」

馬鹿にすんな!と怒るアカイトを無視して(割といつものことだ)春馬がニコニコと告げた。

「夏輝さんとそこで会ってね、今日はダッツ買っちゃった」
「ますたー…!」

いつもなら。
いつもなら嬉しいのだけど!
うー…と小さく唸るカイトにあれ?と首を傾げた春馬に説明してやる。

「究極の選択中だからな」
「究極の選択?」
「春馬かアイスか」

それだけでカイトが今何を悩んでいるかわかったらしい。
おかしそうに笑った春馬が、顔の横でアイスの入った袋を揺すった。そのまま首をこてんと倒し名前を呼ぶ。

「カイト?」
「、ますたぁー!」

ぎゅ、とカイトが春馬に抱き着いた。
溢れる言葉をなんとか伝えようと必死なカイトの背中を撫でて宥めてやる。

「ま、マスターが大好きなんですよ!」
「うん、ありがとう」
「でも、アイスも大好きなんですよ…」
「うん、そうだな」
「でも!マスターも!」

堂々巡りのカイトに春馬が笑う。
いいよ、カイトのいちばんがふたつでも。
そう言うと更に慌てた様子のカイトに、春馬はまた笑った。



「で、アカイト的には?」
「は?」

その晩、春馬の家で夕食を食べて帰宅した夏輝は寝支度をするアカイトに問う。

「究極の選択。そうだなー…仕事してるときの俺とオフの俺、どっちが好き?」
「どっちもお前じゃねえか」
「いいから!」

仕事中を見せることはないが、夏輝の出ている番組はほとんど見ているアカイトだ。
テレビに出ているときは、それはそれはかっこいい“夏輝”が映っているわけで。
どっちが好みか、単純に気になる。

「…どっちでもいい」
「えー、そんな、」
「理由はもう言った」

え、と思わぬ言葉に怯んだ隙にアカイトがすたこら寝室へ駆けて行ってしまった。
そうして、思い出す。


―――どっちもお前じゃねえか。


「、アカイトー!待って!一緒に寝ようかー!」
「うっさい来んなばか!」

夏輝は嬉しげにアカイトの後を追いかけた。


アルティメット・チョイス
(君にとっての究極の選択!)


かずさリクエスト「マスマス赤青」でした!
うちのますたズの肉付けを…と思ったのに何ひとつ肉がついてないね。あれ…?
最初もう少しボカロ組がでれる予定だったのに、行き着いたところはここでした

かずさ、リクエストありがとうございました!

(111130)