サクサクと雪の上を進むコウキくんを追いかけて、私は転ばないよう慎重に足を踏み出した。マフラーが口を塞いで息苦しい。ぷは、と息を吐き出せば、振り向いたコウキくんが気遣わしげに眉を寄せた。
「ごめん、歩くの速かった?」
「ううん、大丈夫」
本当?疲れたら言ってね、とスピードを落としてくれたコウキくんの背中を見て、たった一歳しか違わないはずなのにジュンとは大違いだなあと思う。
ジュンだったら、おせーよ、罰金だ!と騒ぐに違いない。なにが罰金よ、と思わず舌を出す。べーだ、女の子を気遣えないジュンの方が罰金ものじゃない。
「ジュンのばか」
思わず小さく呟けば、ん?とコウキくんが再び振り向いた。
なんでもないのと言ったけど、コウキくんが気になるなあって笑ったから、思ったことをそのまま口にする。
「コウキくんは大人っぽいなって思ったの」
「そうかな?」
「そうだよ。さっきだって、ジュンだったら絶対文句言ってたもの」
ジュンったら子供なんだから、と膨れるとコウキくんが音を立てて笑った。
なんだか私も子供っぽかったかな、って少し恥ずかしくなる。
「コウキくんはいつも落ち着いてるね」
「そんなことないよ」
コウキくんは笑みを浮かべて私の手を取り、自分の胸に押し付けた。
「今だって、好きな子と話してるだけでこんなに心臓がドキドキしてる」
「…コウキくん、ずるい」
照れて笑うコウキくんよりもずっと赤い顔をした私は、それを隠すようにマフラーに顔を埋めた。
「好き」は伝染する
(息苦しさなんて構ってられない)
捧げ物/とともか様へ
(101205)