テストってつまんない。テスト勉強はめんどいし、テスト期間はサッカーできないし。名門武蔵森では赤点は許されない。自然とキャプテンの目も厳しくなる。

「…藤代、さっきも休憩してなかったか?」
「や、やだなあキャプテン。今来たとこっすよ」

一時間も談話室でテレビ見てたなんて言えるわけもなく、俺は曖昧な笑みを浮かべてごまかした。
そろそろここにもいづらくなってきた。しかし部屋はもっといづらい。タクが静かに勉強してるのだ。

「あんまり遊びすぎるなよ」
「昨日真田んちでやったんで大丈夫っすよ!」

これは本当で、昨日は真田にテスト勉強を見てくれと言って無理やり約束を取り付けた。
ぶつぶつ言いながらも実はいい奴な真田は、昔作ったノートを引っ張り出して見せてくれたり(真田の学校では授業の順序が違うようで、もう終わったとこだったらしい)うんうん唸りながら必死に解説してくれたりした。
そんな様子が可愛くて、勉強会どころではなかったのだけれど。

(だって、あれは真田が悪い)

ちょっと休憩、とほんのいたずら心でちょっかいを出したら、思いの外反応がよくて。
そのまま止まらず、最後までしてしまった。

(怒られて、もう知らねえってまで言われたけど、)

しょうがなかったよなあ、とひとり頷いていたら、キャプテンに肩を叩かれた。

「…藤代」
「も、もう部屋に戻りますって!」

静かなるオーラに押されて、俺は後ずさりながら部屋へ戻った。



「ただいまー」
「おかえり。あれ、勉強する気になったの?」
「んー…」

部屋ではタクが机に向かい教科書を開いている。
曖昧な返事をしながら、とりあえず机の前に腰掛けるもののやる気はない。
昨日の勉強会の荷物でも片付けようかな、と鞄の中身を机にぶちまければ、見慣れぬノートが一冊。

「あれ、」

これは真田のノートだ。
紛れ込んでいたらしい。

「…タク、ちょっと出かけてくる!」
「また?どこに行くの?」
「真田んち!」

昨日行ったのに?なんて聞かれたけど、聞こえないふりをして。
だって、会いたくてたまらないから。

昨日のことまだ怒ってるかな。テスト勉強しろよ、って言われるだろうな。
それに謝って、今度こそ勉強を教えて貰おう。
大丈夫、口実はある。

「藤代、今度はどこに行くんだ?」
「ノート返してくるっす!」

苦笑いのキャプテンに気づかないふりをして、玄関を飛び出した。


借りたノート
(今会いに行くぜ!)


かじゅま受けは藤真が一番好き!
title→joy
(101218)