「だいたいねえ、あんたには思いきりがないのよ」

ようやく静かになったかと思ったのに。
寝たのかとグラスを奪おうとした瞬間ガバリとうつ伏せていた上体を起こしたブルーに、伸ばしかけていた手を引っこめた。

「ちょっと、聞いてるのぉ?」
「聞いてる。それで?」
「だからねえ、あんたには!思いきりが!」

そこまで言って楽しくなってしまったらしい。あはは、と上機嫌に笑い始めたブルーにばれないようにため息を吐く(ばれたらまた突っかかってくるに違いないという確信がグリーンにはあった)
ブルーは酔いやすいタイプではなかったはずだ。こんなに酔うまで飲むことも普段はない。
というのに、どうして今日に限って。

「こーんなかわいい女の子と、サシで飲んでるのよぉ?なんにもしないなんて馬鹿じゃないの。枯れてるの?」

ブルーとサシで飲んだのは初めてだった。
仲間内で飲むときに絡み酒なんてしているところなど見たことがない。何が彼女をそうさせたかは知らないが、今日はひどくハイペースで煽っていたから酔いが回るのも早かったのだろうと思った。

「だから彼女ができないのよぉー」
「余計なお世話だ。だいたいお前だっていないだろう」
「ブルーちゃんは“できない”んじゃなくて“作らない”だけですー」

ふふん、と何やら勝ち誇った顔をされたが、所詮は酔っ払いの戯れ言だ。はいはい、とおざなりな返事をすれば不服そうな表情になったものの、なだめるように頭を撫でればご機嫌に笑んだ。

「ふふふー」
「ご機嫌だな」
「だって、おいしいお酒においしい肴ですもの」

肴?
つまみは普段飲むときと変わらないものばかりだ。何が気に入ったのかと首を傾げるも、ブルーはふにゃふにゃと何か言葉らしきものを言うだけで聞きとれやしない。

「ねえ、ぐりぃーんー…」
「なんだ」
「彼女ができないなら、あたしがなってあげようか」

ぱちくりと目を瞬かせてブルーを見る。酒気を帯びた頬は赤らんでいたが、その真意はわからなかった。

「…いいからもう寝ろ」
「むう、本気にしてないでしょ。あたしが彼女になってあげるって言ってるのよぉ?どぉよ、どおなのよぉ」

ああ、まったく質が悪い。
この酔い方、明日になればどうせ忘れているくせに!

「……明日、酔いが醒めても言えたならな」

酔っ払いの言葉に、こんな風に期待している自分も大分酒が回ってるな。
自嘲しグイと酒を流し込んで、彼女を寝せるため客室ベッドのメイキングへ向かう。

部屋を出たから、グリーンはブルーの呟きなど知る由もなかったのだ。

「…彼女にしてくれるなら、いつでも言えるのに」

零した言葉をなかったことにして、ブルーはテーブルに突っ伏した。酔ったように寝たふりをしなければならない。


相互思い者
(早く気付け。早く気付いて。思ってるだけ。想ってるだけ)


よっしーリクエスト「グリブル」でした!
ラブラブとのリクエストだったのですが…ラブラブ?
そもそも付き合っていない設定で私は一体どうラブラブさせるつもりだったのか
でも付き合ってないのに頭撫でたりしてるこいつらはナチュラルバカップルだと思います(言い訳)
ごめんね、「酔いが醒めても〜」ってグリーンに言わせたかったんです…!

よっしー、リクエストありがとうございました!
(111211)