女の身体と言うのは随分面倒くさく出来ているな、と日吉はため息をついた。重い物は持てないし身長は足りないし、鍛えても鍛えても腕は太くならない。何より一番不都合だと思うのは、やはり月に一度のあれだろうか。

「……つら」

 ズキズキと嫌な痛みを感じながら呟くと、隣の跡部が反応して振り向いた。どうした、と聞かれてなんでもないですと答える。言ったところで女の経験のない者にはわかるまい。

「辛いって身体がか」
「聞こえてんじゃないですか」
「どこか痛めたか?」
「別に、平気ですよ」

 生理痛です、とは恥ずかしくて言いづらくはぐらかした。男に女の秘めた部分を教えるのは何とも決まりが悪い。
 跡部がふむ、と考えるような仕草をしたあと、とりあえず横になっとけとベッドを空けた。それには賛成で日吉は何も言わずに寝そべり息をつく。隣に腰掛けた跡部は日吉の前髪をもてあそびながら再度問うた。

「で、どこが痛いって?」
「……腰」

 これでわからないならもううやむやにしてしまおう。そう思って言えば、跡部がぽかんと瞬いた。まさか痛いのが腰だなんて思わなかったらしい。聡い彼は――それでも男故にそんな理由とは思いもよらなかったようだが――あー……と小さく唸った。合点がいったらしく、控えめに問う。

「鎮痛剤を持ってこさせるか?」
「薬は、飲み過ぎると効かなくなる」
「でも今いてえんだろ」
「……平気です」
「嘘つけ。汗かいてんぞ」

 ぐい、と袖口で拭われて情けないような恥ずかしいような気分になった。枕に顔を埋めそれきり黙る。
 跡部がどうしたものか、という表情でそろそろと日吉の腰を撫でた。労るような手つきに笑みが零れる。

「……わりぃ」
「なんで謝るんですか」
「いくら俺様でも、その痛みは代わってやれねえ。わかってもやれねえ」
「代わってもらおうなんて思ってませんよ」
「俺は、出来るなら代わってやりたい」

 代われるものか。彼は男だ。ましてやわかるはずもない。
 それでも、女の痛みがわからずとも、彼はこうして緩和させようとあれこれしてくれる。
 それは、代わってもらわずとも充分日吉の心を軽くするのだ。

「跡部さん」
「なんだ」
「どうせさするなら、もう少し強く」

 おそるおそると言うように増していく力加減に情けなく笑った。

レディーメイド
(男は男で大変だな)


エイプリルフールネタ
日吉が先天的か後天的かはお任せ
(110401)